百人一首を読んでいると、「恋」「逢ふ」「忍ぶ」といった言葉がとてもよく出てきます。
それもそのはずで、百人一首の100首のうち、43首が恋の歌です。
春・夏・秋・冬の季節の歌を全部合わせても恋の歌より少ないので、百人一首でいちばん多いテーマは「恋」なんです。
この記事では、恋の歌43首を「どんな気持ちの歌か」で4つに分けて、1首ずつ意味をやさしく紹介します。
・百人一首の恋の歌をまとめて知りたい人
・テストや宿題で、歌の意味を調べている小学生・中学生
・子どもに歌の意味を聞かれて、うまく説明したい親
うちは子どもが4人いて、家で百人一首やかるた遊びをしています。
百人一首の遊び方は、こちらにまとめています。

生まれも育ちも愛知県の名古屋市在住の30代会社員!
中学生・小学生2人・保育園児の4人の子どもの父親
趣味は子どもと愛知の遊び場をまわる事♪
- 百人一首の恋の歌 43首の一覧
- 会いたいのに会えない恋の歌(13首)
- 3番 あしびきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む
- 18番 住の江の岸に寄る波よるさへや 夢の通ひ路人目よくらむ
- 19番 難波潟短き蘆のふしの間も 逢はでこの世を過ぐしてよとや
- 20番 わびぬれば今はた同じ難波なる みをつくしても逢はむとぞ思ふ
- 21番 今来むと言ひしばかりに長月の 有明の月を待ち出でつるかな
- 25番 名にし負はば逢坂山のさねかづら 人に知られでくるよしもがな
- 53番 嘆きつつひとり寝る夜の明くる間は いかに久しきものとかは知る
- 56番 あらざらむこの世のほかの思ひ出に いまひとたびの逢ふこともがな
- 59番 やすらはで寝なましものをさ夜ふけて かたぶくまでの月を見しかな
- 63番 今はただ思ひ絶えなむとばかりを 人づてならで言ふよしもがな
- 77番 瀬をはやみ岩にせかるる滝川の われても末に逢はむとぞ思ふ
- 85番 夜もすがらもの思ふころは明けやらで 閨のひまさへつれなかりけり
- 97番 来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに 焼くや藻塩の身もこがれつつ
- ひみつの恋・片思いの歌(12首)
- 13番 筑波嶺の峰より落つるみなの川 恋ぞつもりて淵となりぬる
- 14番 陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに 乱れそめにしわれならなくに
- 27番 みかの原わきて流るるいづみ川 いつ見きとてか恋しかるらむ
- 39番 浅茅生の小野の篠原しのぶれど あまりてなどか人の恋しき
- 40番 しのぶれど色に出でにけりわが恋は ものや思ふと人の問ふまで
- 41番 恋すてふわが名はまだき立ちにけり 人知れずこそ思ひそめしか
- 46番 由良のとを渡る舟人かぢを絶え ゆくへも知らぬ恋の道かな
- 49番 みかきもり衛士のたく火の夜は燃え 昼は消えつつものをこそ思へ
- 51番 かくとだにえやはいぶきのさしも草 さしも知らじな燃ゆる思ひを
- 88番 難波江の蘆のかりねのひとよゆゑ みをつくしてや恋ひわたるべき
- 89番 玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば 忍ぶることの弱りもぞする
- 92番 わが袖は潮干に見えぬ沖の石の 人こそ知らねかわく間もなし
- 会えたあとの気持ちの歌(7首)
- つらい恋・失恋の歌(11首)
- 38番 忘らるる身をば思はず誓ひてし 人の命の惜しくもあるかな
- 42番 契りきなかたみに袖をしぼりつつ 末の松山波越さじとは
- 45番 あはれともいふべき人は思ほえで 身のいたづらになりぬべきかな
- 48番 風をいたみ岩うつ波のおのれのみ くだけてものを思ふころかな
- 58番 有馬山猪名の笹原風吹けば いでそよ人を忘れやはする
- 65番 恨みわびほさぬ袖だにあるものを 恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ
- 72番 音に聞く高師の浜のあだ波は かけじや袖のぬれもこそすれ
- 74番 憂かりける人を初瀬の山おろしよ はげしかれとは祈らぬものを
- 82番 思ひわびさても命はあるものを 憂きにたへぬは涙なりけり
- 86番 嘆けとて月やはものを思はする かこち顔なるわが涙かな
- 90番 見せばやな雄島のあまの袖だにも ぬれにぞぬれし色は変はらず
- まとめ|恋の歌は百人一首でいちばん多いテーマ
百人一首の恋の歌 43首の一覧
まずは43首を番号順にならべました。「気持ち」の列は、この記事での分け方です。
| 番号 | 上の句 | 作者 | 気持ち |
|---|---|---|---|
| 3 | あしびきの山鳥の尾のしだり尾の | 柿本人麻呂 | 会いたいのに会えない |
| 13 | 筑波嶺の峰より落つるみなの川 | 陽成院 | ひみつの恋 |
| 14 | 陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに | 河原左大臣 | ひみつの恋 |
| 18 | 住の江の岸に寄る波よるさへや | 藤原敏行朝臣 | 会いたいのに会えない |
| 19 | 難波潟短き蘆のふしの間も | 伊勢 | 会いたいのに会えない |
| 20 | わびぬれば今はた同じ難波なる | 元良親王 | 会いたいのに会えない |
| 21 | 今来むと言ひしばかりに長月の | 素性法師 | 会いたいのに会えない |
| 25 | 名にし負はば逢坂山のさねかづら | 三条右大臣 | 会いたいのに会えない |
| 27 | みかの原わきて流るるいづみ川 | 中納言兼輔 | ひみつの恋 |
| 30 | 有明のつれなく見えし別れより | 壬生忠岑 | 会えたあとの気持ち |
| 38 | 忘らるる身をば思はず誓ひてし | 右近 | つらい恋・失恋 |
| 39 | 浅茅生の小野の篠原しのぶれど | 参議等 | ひみつの恋 |
| 40 | しのぶれど色に出でにけりわが恋は | 平兼盛 | ひみつの恋 |
| 41 | 恋すてふわが名はまだき立ちにけり | 壬生忠見 | ひみつの恋 |
| 42 | 契りきなかたみに袖をしぼりつつ | 清原元輔 | つらい恋・失恋 |
| 43 | 逢ひ見ての後の心にくらぶれば | 権中納言敦忠 | 会えたあとの気持ち |
| 44 | 逢ふことの絶えてしなくはなかなかに | 中納言朝忠 | 会えたあとの気持ち |
| 45 | あはれともいふべき人は思ほえで | 謙徳公 | つらい恋・失恋 |
| 46 | 由良のとを渡る舟人かぢを絶え | 曾禰好忠 | ひみつの恋 |
| 48 | 風をいたみ岩うつ波のおのれのみ | 源重之 | つらい恋・失恋 |
| 49 | みかきもり衛士のたく火の夜は燃え | 大中臣能宣朝臣 | ひみつの恋 |
| 50 | 君がため惜しからざりし命さへ | 藤原義孝 | 会えたあとの気持ち |
| 51 | かくとだにえやはいぶきのさしも草 | 藤原実方朝臣 | ひみつの恋 |
| 52 | 明けぬれば暮るるものとは知りながら | 藤原道信朝臣 | 会えたあとの気持ち |
| 53 | 嘆きつつひとり寝る夜の明くる間は | 右大将道綱母 | 会いたいのに会えない |
| 54 | 忘れじの行く末まではかたければ | 儀同三司母 | 会えたあとの気持ち |
| 56 | あらざらむこの世のほかの思ひ出に | 和泉式部 | 会いたいのに会えない |
| 58 | 有馬山猪名の笹原風吹けば | 大弐三位 | つらい恋・失恋 |
| 59 | やすらはで寝なましものをさ夜ふけて | 赤染衛門 | 会いたいのに会えない |
| 63 | 今はただ思ひ絶えなむとばかりを | 左京大夫道雅 | 会いたいのに会えない |
| 65 | 恨みわびほさぬ袖だにあるものを | 相模 | つらい恋・失恋 |
| 72 | 音に聞く高師の浜のあだ波は | 祐子内親王家紀伊 | つらい恋・失恋 |
| 74 | 憂かりける人を初瀬の山おろしよ | 源俊頼朝臣 | つらい恋・失恋 |
| 77 | 瀬をはやみ岩にせかるる滝川の | 崇徳院 | 会いたいのに会えない |
| 80 | 長からむ心も知らず黒髪の | 待賢門院堀河 | 会えたあとの気持ち |
| 82 | 思ひわびさても命はあるものを | 道因法師 | つらい恋・失恋 |
| 85 | 夜もすがらもの思ふころは明けやらで | 俊恵法師 | 会いたいのに会えない |
| 86 | 嘆けとて月やはものを思はする | 西行法師 | つらい恋・失恋 |
| 88 | 難波江の蘆のかりねのひとよゆゑ | 皇嘉門院別当 | ひみつの恋 |
| 89 | 玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば | 式子内親王 | ひみつの恋 |
| 90 | 見せばやな雄島のあまの袖だにも | 殷富門院大輔 | つらい恋・失恋 |
| 92 | わが袖は潮干に見えぬ沖の石の | 二条院讃岐 | ひみつの恋 |
| 97 | 来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに | 権中納言定家 | 会いたいのに会えない |
全100首を番号順に見たいときは、こちらの一覧をどうぞ。


想いを歌にするなんて
昔の人は素敵ね♪
会いたいのに会えない恋の歌(13首)
いちばん多いのが、「会いたいのに会えない」「待っているのに来ない」という歌です。
平安時代は、男の人が女の人の家をたずねるのがふつうだったので、女の人は待つしかないことが多かったんですね。
3番 あしびきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む
作者:柿本人麻呂
【意味】
山鳥の、長くたれ下がった尾のように長い長い夜を、私は恋しい人に会えないまま、ひとりで寝るのだろうか。
「の」が何回も続いて、夜の長さがそのまま伝わってくる歌です。
声に出すとリズムがよくて、覚えやすい1首です。
18番 住の江の岸に寄る波よるさへや 夢の通ひ路人目よくらむ
作者:藤原敏行朝臣
【意味】
住の江の岸に寄せる波の「よる」ではないけれど、夜に見る夢の中でさえ、あなたはどうして人目をさけて、会いに来てくれないのだろう。
昔は「夢に好きな人が出てくるのは、相手が自分を思ってくれているから」と考えられていました。
夢にも出てきてくれない、というさみしい歌です。
19番 難波潟短き蘆のふしの間も 逢はでこの世を過ぐしてよとや
作者:伊勢
【意味】
難波潟に生えている蘆の、節と節の間のような、ほんの短い時間さえも会わないまま、一生を過ごせとあなたは言うのですか。
20番 わびぬれば今はた同じ難波なる みをつくしても逢はむとぞ思ふ
作者:元良親王
【意味】
こんなに思い悩んでしまったら、今となってはもうどうなっても同じこと。難波の「みをつくし」のように、この身をほろぼしてでも、あなたに会いたい。
「みをつくし」は、海で船の通り道を知らせる目印のくいのことです。
それと「身を尽くし(命をかけて)」を重ねています。88番にも同じ「みをつくし」が出てきます。
21番 今来むと言ひしばかりに長月の 有明の月を待ち出でつるかな
作者:素性法師
【意味】
「すぐに行くよ」とあなたが言ったから、秋の長い夜をずっと待ち続けて、とうとう明け方の月が出るまで待ってしまった。
作者はお坊さん(男の人)ですが、待っている女の人の立場になって詠んだ歌です。
25番 名にし負はば逢坂山のさねかづら 人に知られでくるよしもがな
作者:三条右大臣
【意味】
「逢う」という名前を持つ逢坂山のさねかずら。そのつるをたぐり寄せるように、誰にも知られずに、あなたのところへ行く方法があればいいのに。
53番 嘆きつつひとり寝る夜の明くる間は いかに久しきものとかは知る
作者:右大将道綱母
【意味】
あなたが来ないのを嘆きながら、ひとりで寝る夜が明けるまでの時間が、どれほど長いものか、あなたは知っていますか。きっと知らないでしょうね。
作者は『蜻蛉日記』を書いた人です。
56番 あらざらむこの世のほかの思ひ出に いまひとたびの逢ふこともがな
作者:和泉式部
【意味】
私はもうすぐ、この世からいなくなってしまうでしょう。あの世へ持っていく思い出に、せめてもう一度だけ、あなたに会いたい。
病気で寝こんでいたときに詠んだ歌だといわれています。
和泉式部については、こちらの記事でくわしく書いています。

59番 やすらはで寝なましものをさ夜ふけて かたぶくまでの月を見しかな
作者:赤染衛門
【意味】
来ないとわかっていたら、ためらわずに寝てしまえばよかった。あなたを待っているうちに夜がふけて、月が西にかたむくまで見てしまいました。
63番 今はただ思ひ絶えなむとばかりを 人づてならで言ふよしもがな
作者:左京大夫道雅
【意味】
今はもう、あなたのことはあきらめます。せめてその一言だけでも、人に頼むのではなく、直接あなたに伝える方法があればいいのに。
身分の高い女の人との恋を、まわりに反対されて会えなくなったときの歌です。
77番 瀬をはやみ岩にせかるる滝川の われても末に逢はむとぞ思ふ
作者:崇徳院
【意味】
流れが速くて、岩にぶつかって二つに分かれた川の水も、また先で一つになる。そのように、今は離ればなれでも、いつかきっとまたあなたに会おうと思う。
会えない歌の中では、めずらしく前向きな歌です。
85番 夜もすがらもの思ふころは明けやらで 閨のひまさへつれなかりけり
作者:俊恵法師
【意味】
来ない人を思って、ひと晩じゅう悩んでいるこのごろは、なかなか夜が明けなくて、寝室の戸のすき間まで、冷たくそっけなく思える。
21番と同じく、お坊さんが女の人の立場で詠んだ歌です。
97番 来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに 焼くや藻塩の身もこがれつつ
作者:権中納言定家
【意味】
いくら待っても来ない人を待っている私は、まつほの浦で夕方に焼かれる藻塩のように、身がこげるほど恋しく思っている。
「まつ」は、地名の「松帆」と「待つ」を重ねています。
作者の藤原定家は、百人一首の100首を選んだ人です。自分の歌も1首入れているんですね。
ひみつの恋・片思いの歌(12首)
好きだと言えない、誰にも知られたくない、という歌です。
昔の歌では、こういう恋を「忍ぶ恋」と言います。
13番 筑波嶺の峰より落つるみなの川 恋ぞつもりて淵となりぬる
作者:陽成院
【意味】
筑波山の峰から流れ落ちるみなの川が、だんだん深い淵になっていくように、私の恋心も積もり積もって、こんなに深くなってしまった。
14番 陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに 乱れそめにしわれならなくに
作者:河原左大臣
【意味】
陸奥の「しのぶもじずり」という布の、乱れた模様のように、私の心は乱れています。誰のせいで乱れはじめたのでしょう。私のせいではありません。あなたのせいなのに。
27番 みかの原わきて流るるいづみ川 いつ見きとてか恋しかるらむ
作者:中納言兼輔
【意味】
みかの原をわけて流れるいずみ川の「いつみ」ではないけれど、いつ会ったというわけでもないのに、どうしてこんなに恋しいのだろう。
まだ会ったこともない人に恋をしている歌です。
昔は、うわさを聞いただけで好きになることもあったそうです。
39番 浅茅生の小野の篠原しのぶれど あまりてなどか人の恋しき
作者:参議等
【意味】
浅茅が生えている野原の篠竹の「しの」のように、がまんして気持ちを隠しているけれど、隠しきれない。どうしてこんなにあの人が恋しいのだろう。
40番 しのぶれど色に出でにけりわが恋は ものや思ふと人の問ふまで
作者:平兼盛
【意味】
隠していたのに、顔に出てしまっていたようだ、私の恋は。「何か悩んでいるの?」と人に聞かれるほどに。
41番 恋すてふわが名はまだき立ちにけり 人知れずこそ思ひそめしか
作者:壬生忠見
【意味】
「あの人は恋をしているらしい」という私のうわさが、もう広まってしまった。誰にも知られないように、心の中で思いはじめたばかりだったのに。
40番と41番は、天皇の前で行われた歌合(歌の勝負)で、同じ「忍ぶ恋」というお題で戦った2首です。
勝ったのは40番の平兼盛でした。
並べて覚えると、番号も内容もセットで覚えられます。
46番 由良のとを渡る舟人かぢを絶え ゆくへも知らぬ恋の道かな
作者:曾禰好忠
【意味】
由良の海峡をわたる船頭が、かじをなくして、どこへ流されるかわからないように、この先どうなるのかわからない、私の恋の道だなあ。
49番 みかきもり衛士のたく火の夜は燃え 昼は消えつつものをこそ思へ
作者:大中臣能宣朝臣
【意味】
宮中の門を守る兵士のたくかがり火が、夜は燃えて昼は消えるように、私の恋心も、夜は燃え上がり、昼は消えそうなほど沈みこんで、悩み続けている。
51番 かくとだにえやはいぶきのさしも草 さしも知らじな燃ゆる思ひを
作者:藤原実方朝臣
【意味】
こんなに好きだということさえ言えないのだから、伊吹山のさしも草のように燃えているこの思いを、あなたはそれほどだとは知らないでしょうね。
「さしも草」は、お灸に使うもぐさのことです。もぐさが燃えるように、恋心が燃えているんですね。
88番 難波江の蘆のかりねのひとよゆゑ みをつくしてや恋ひわたるべき
作者:皇嘉門院別当
【意味】
難波の入り江の蘆の、短い「ひとふし」のように、旅先でたった一晩会っただけなのに、私はこの身をかけて、ずっと恋し続けることになるのでしょうか。
20番と同じ「みをつくし」が出てきます。
89番 玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば 忍ぶることの弱りもぞする
作者:式子内親王
【意味】
私の命よ、終わるなら終わってしまいなさい。このまま生きていたら、恋心を隠す力が弱って、人に知られてしまうかもしれないから。
92番 わが袖は潮干に見えぬ沖の石の 人こそ知らねかわく間もなし
作者:二条院讃岐
【意味】
私の袖は、潮が引いても見えない沖の石のようです。誰も知らないけれど、涙でかわくひまもありません。
この歌が評判になって、作者は「沖の石の讃岐」と呼ばれたそうです。
会えたあとの気持ちの歌(7首)
会えたらうれしいだけ、ではないのが平安時代の恋の歌です。
朝の別れがつらい、会ったらもっと苦しくなった、という歌が集まっています。
30番 有明のつれなく見えし別れより 暁ばかり憂きものはなし
作者:壬生忠岑
【意味】
明け方の月がそっけなく見えた、あの冷たい別れの日から、夜明け前ほどつらいものはない。
43番 逢ひ見ての後の心にくらぶれば 昔はものを思はざりけり
作者:権中納言敦忠
【意味】
あなたに会ってからの今の気持ちにくらべたら、会う前の悩みなんて、何も悩んでいなかったのと同じだった。
44番 逢ふことの絶えてしなくはなかなかに 人をも身をも恨みざらまし
作者:中納言朝忠
【意味】
もし、会うということがまったくなかったなら、かえって、あの人のことも自分のことも、恨んだりしなかっただろうに。
50番 君がため惜しからざりし命さへ 長くもがなと思ひけるかな
作者:藤原義孝
【意味】
あなたに会うためなら惜しくないと思っていた命なのに、会えた今は、できるだけ長く生きたいと思うようになった。
作者は、21歳という若さで亡くなっています。それを知って読むと、少しせつなくなる歌です。
52番 明けぬれば暮るるものとは知りながら なほうらめしき朝ぼらけかな
作者:藤原道信朝臣
【意味】
夜が明ければ、また日が暮れて会えるとわかっている。それでもやっぱり、別れの夜明けはうらめしい。
54番 忘れじの行く末まではかたければ 今日を限りの命ともがな
作者:儀同三司母
【意味】
「ずっと忘れないよ」というあなたの言葉が、遠い先まで続くのはむずかしいでしょう。だから、幸せな今日を最後に、命が終わってしまえばいいのに。
80番 長からむ心も知らず黒髪の 乱れて今朝はものをこそ思へ
作者:待賢門院堀河
【意味】
「ずっと変わらない」というあなたの心が本当かどうかわからなくて、黒髪が乱れるように、今朝の私の心は乱れて、悩んでいます。
つらい恋・失恋の歌(11首)
相手が冷たい、心変わりされた、ふられた、という歌です。
中には、言い寄ってきた相手をきっぱり断る歌もあります。
38番 忘らるる身をば思はず誓ひてし 人の命の惜しくもあるかな
作者:右近
【意味】
あなたに忘れられてしまう私のことはいいのです。ただ、「ずっと好きだ」と神様に誓ったあなたが、ばちが当たって命を落とすのではないかと、それが惜しい。
心配しているようにも、皮肉を言っているようにも読める歌です。
42番 契りきなかたみに袖をしぼりつつ 末の松山波越さじとは
作者:清原元輔
【意味】
約束しましたよね。おたがいに涙でぬれた袖をしぼりながら、「末の松山を波が越えることがないように、二人の心も変わらない」と。
作者は、清少納言のお父さんです。

45番 あはれともいふべき人は思ほえで 身のいたづらになりぬべきかな
作者:謙徳公
【意味】
「かわいそうに」と言ってくれそうな人も思いうかばないまま、私はこのまま、むなしく死んでしまうのだろうか。
48番 風をいたみ岩うつ波のおのれのみ くだけてものを思ふころかな
作者:源重之
【意味】
風が強くて、岩に打ちつける波が自分だけくだけ散るように、相手は平気なのに、私だけが心をくだいて悩んでいるこのごろだ。
58番 有馬山猪名の笹原風吹けば いでそよ人を忘れやはする
作者:大弐三位
【意味】
有馬山の近くの猪名の笹原に風が吹くと、笹が「そよそよ」と鳴ります。そうよ、心変わりしたのはあなたのほう。私があなたを忘れたりするものですか。
作者は、紫式部の娘です。

65番 恨みわびほさぬ袖だにあるものを 恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ
作者:相模
【意味】
あの人を恨んで嘆いて、涙でかわかない袖さえ、ぼろぼろになりそうでくやしいのに、この恋のうわさで、私の評判まで落ちてしまうのがくやしい。
72番 音に聞く高師の浜のあだ波は かけじや袖のぬれもこそすれ
作者:祐子内親王家紀伊
【意味】
うわさに聞く高師の浜の、むやみに立つ波のような、浮気なあなたの言葉は、心にかけないでおきます。あとで涙で袖がぬれるといけませんから。
言い寄ってきた男の人に、きっぱり断りの返事をした歌です。
恋の歌の中では、ちょっと強気でかっこいい1首です。
74番 憂かりける人を初瀬の山おろしよ はげしかれとは祈らぬものを
作者:源俊頼朝臣
【意味】
冷たいあの人が、私を好きになってくれるようにと、初瀬の観音様に祈ったのに。初瀬の山から吹きおろす風よ、お前のように、もっと冷たくなってほしいとは祈らなかったのに。
82番 思ひわびさても命はあるものを 憂きにたへぬは涙なりけり
作者:道因法師
【意味】
つらい恋に悩んでも、それでも命はまだ続いているのに、つらさにたえきれずに流れてしまうのは、涙だった。
86番 嘆けとて月やはものを思はする かこち顔なるわが涙かな
作者:西行法師
【意味】
「嘆け」と言って、月が私を悩ませているのだろうか。いや、そうではない。恋のせいなのに、まるで月のせいだと言いたそうな顔をして、私の涙は流れてくる。
90番 見せばやな雄島のあまの袖だにも ぬれにぞぬれし色は変はらず
作者:殷富門院大輔
【意味】
あなたに見せたいものです。雄島の漁師の袖でさえ、どんなにぬれても色は変わらないのに、私の袖は、涙で色まで変わってしまいました。
まとめ|恋の歌は百人一首でいちばん多いテーマ
百人一首の恋の歌43首を、4つの気持ちに分けて紹介しました。
・会いたいのに会えない歌(13首)
・ひみつの恋・片思いの歌(12首)
・会えたあとの気持ちの歌(7首)
・つらい恋・失恋の歌(11首)
100首のうち43首が恋の歌なので、恋の歌がわかると、百人一首のほぼ半分がわかることになります。
「待つ」「忍ぶ」「袖がぬれる(=泣いている)」など、よく出てくる言葉に気づくと、知らない歌でも意味が想像しやすくなります。
百人一首の意味をマンガで楽しく知りたいなら、この本がわかりやすいです。
テストの前に、歌を覚えたか確かめたいときは、無料のプリント作成ツールも使ってみてください。

季節の歌も、それぞれまとめています。
家でかるたをするなら、子ども向けのかるたの選び方も参考にしてください。

以上「百人一首の恋の歌 43首~片思い・会えない夜・失恋…気持ち別に意味を解説~」でした!













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